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とびきり幸せなパートナー : ルーシー・ボストンとピーター・ボストン

Abstract

ルーシー・ボストンは、ひとり息子のピーターが自分の子ども向けの作品ほぼすべての挿絵を描いていることについて、ことのほか喜んでいた。このことは、1972年にレディング大学で行なった講演会後の質疑応答からわかる。それによると、ピーターが挿絵を手がけるようになったきっかけは、ルーシーの処女作のひとつ、『グリーン・ノウの子どもたち』(「グリーン・ノウ」シリーズ第1巻)に、建築家の息子に挿絵を描かないかもちかけたところ、彼が即座に同意したことで、その快諾はルーシーにとって「格別の喜び」だったこと、こうして、彼女は、創作上の「とびきり幸せなパートナー」を得たこと、などを明らかにしている。ピーター・ボストンは、2種類の手法を用いている。通常の木口版画とスクレイパーボード(別名スクラッチボード)を用いた版画とである。木口版画の場合には、通常どおり版木を尖った彫刻刀で彫って印字面を表現しているが、ピーターの作品のなかには、彼が敬愛していた木口版画の巨匠トマス・ビューイックを彷彿とさせるものもいくつかある。また、版画家としてピーターがとくにこだわったのは、黒と白の対比(とくに黒の醸し出す強い印象)である。そのため、1ページ丸々使って挿絵を刷り、四辺の余白をすっかり裁ち落としにするように印刷屋に指示までした。このため、印刷屋は、ページ全紙の挿絵の場合、吸い込みの少ない上質の紙に印刷したのち、原画を反転(ときに縮小)する指示に従って、元のネガ(陰画)を印刷したうえで、1枚ずつ手で糊付けして本に挟み込まなければならなかった。これは、あまりに労が多く高くついたため、第2巻以降では変えざるをえなくなった。そこで、ピーターが考え出したのが、版木の代わりにスクレイパーボードを使う手法である。彼は、たいてい、白い紙のボードを用い、必要な面に墨汁を塗ったうえで、尖った彫刻刀で黒い面を「削り」とって、その下の白の層を見せる形で製作している。これらいずれの手法も、思う存分、繊細で細かい細部まで描く――錯覚かと思い込みそうなほんのわずかな瞬間を繊細に提示する――ことや、荒々しく神業的な力を大胆に自信たっぷりに表現すること、小さな画面で遠近感を出したりするのにうってつけであった。同時に、それらは、この挿絵画家が、それぞれの作品の主題をゆるぎなく受けとめたうえであることは言うまでもない。のちに、母親のルーシーは、「自分には絵的想像力はまったくないのに対し、ピーターの方は、『私が考えるしかできないことを魔法のように描ける』」と評している。ルーシー・ボストンは、見え、書ける。その息子は、見え、描ける。作家と挿絵画家として、ふたりは、まさに「とびきり幸せなパートナー」であった

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Last time updated on 17/10/2019

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